小景異情(二)  室生犀星

大手礼二郎が敬愛したという室生犀星。
犀星の哀愁ある詩のリズムが、彼の東京での孤独な生活の慰めになったのでしょう。
それがこの有名な犀星の小景異情の(二) 

国語の時間に習った人も多いのでは? 



ふるさとは遠きにありて思ふもの 
そして悲しくうたふもの 
よしや 
うらぶれて異土の乞食(かたゐ)となるとても 
帰るところにあるまじや 
ひとり都のゆふぐれに 
ふるさとおもひ涙ぐむ 
そのこころもて 
遠きみやこにかへらばや 
遠きみやこにかへらばや 

これには実は解釈が難しい所があるのですが、教科書に書かれている質問は、この詩はどこで書かれているか?というものでしょう。 
妥当に考えると、これは彼の田舎(金沢)で書かれている、と考えるのが自然のようです。 

東京での生活に疲れ果てて田舎(金沢)へ帰ったけれども、 
田舎でも彼への風当たりは強かった(犀星は妾の子ということで田舎では差別に苦しんだようです)。 

それで、この詩を歌ったのです。つまり、解釈すれば、 


ふるさとは遠くにあって思うものだ。 
そして悲しく歌うものだ。 
たとえ異土の乞食になったとしても、 
帰るところではない。 

「一人都の夕暮れに、故郷を思い涙ぐむ」 

その心をもって、 
遠いみやこ(東京)へ帰りたい。 
遠いみやこ(東京)へ帰りたい。 



「都」と「みやこ」の違いは、東京と金沢、と取る解釈もあるようですが、 
私が思うには、これはどちらも東京で、 
彼が理想としたみやこと、現実の都の違いを表現しているのだと思います。 

(写真は金沢の室生犀星記念館で購入した小景異情の復刻原稿と絵葉書)




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